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失った声が再び戻った喜び
上級 長谷川 正一

   声を失い、相手に意思を伝える手段が、筆談、ELなどしかない悲しみは、当人しか判りません。 
銀鈴会に入会し、初心から発声練習に明け暮れ、ほとんど休まず教室に通った毎日。   声が出るんだろうか、不安の毎日。
原音の一声、「あ」が出た時の喜びは言葉に言い表せません。 二音のアメ、次の段階のステップとして、二音から三音へ増やす練習「あたま」と三音へ(あたまー)と四音へ、「おはようー」と伸ばす、「こんにちは」と 五音へと言葉を伸ばして行きました。 
でも空気の入れ方は、飲み込み法です。吸引法への切り替えは容易ではありません。口を閉じるな、開けたままでの空気の取り入れは中々できません。 飲み込み法から中々離れる事ができません。上級に昇格した時でも、吸引法は上手くできず、会話は上手くいきません。
口を直ぐ閉じてしまいます。 現在でも中々抜けきれません。月二,三回のカラオケ教室にも毎回参加し練習に励みました。
 カラオケのお陰で意識しなくてもお腹を膨らませる事で空気が食道に入り、腹圧をかける事で発声がスムーズに出来る様になりました。
 最初は腹圧のかけ方で随分悩みました。 腹を膨らませて発声するか凹ませて発声するかです、でもこれはどちらでもよいと、後でわかりました。  取り入れた空気の使い方も上手く出来る様になり、店舗の早い曲、遅い曲でも息継ぎが素早くなり、曲について行けるようになりました。 オクターブの変化はつきません。これからの課題です。 

毎朝起きると原音発声練習、朝刊の社説、編集手帳、夕刊の寸評などを読み、また散歩の時は 「こんにちは」等五音の発声練習、数字を数えると息継ぎの良い練習になります。 我々喉摘者は毎日声を出さないと直ぐに出なくなります。 
毎日が練習です。怠ると直ぐ声は出なくなります。声が出る様になり、スピーチも段々良くなると性格も大きく変わった気がします。  良く言えば積極性が出た、悪く言えば出たがり、出しゃばりになった。
なせばなる、為さねばならぬ何事も、 なさぬは人の為さぬなりけり。 上杉鷹山の名言です、 これを胸にこれからも頑張るつもりです。思いつくまま書きました。

神奈川銀鈴会の会報第40号(平成25年)から掲載しました