入会案内/ 家族会/ 事務局/ 行事予定/ 恩典/ 寄稿文/ 訪問・支援/ 身体の相談/ 発声の上達
発声教室( はじめに/ 初級/ 中級/ 上級/ 小田原/ EL)/総会/ 歌の会 /// トップページ



令和2年度神奈川銀鈴会家族懇談会 質問事項に対する回答 「予定:令和3年2月26日(金)未催行」

令和2年度の家族懇談会は、コロナ禍にて昨年度に続き中止決定し、昨年度に長年当会の顧問をお願いしてきました廣瀬先生のご後任として、 ご就任戴きました久保田先生にご書面でのご回答を戴く事で、会員皆様の質問にご対応いただきました。
久保田顧問: 
手術の後遺症である音声機能喪失、嚥下障害、肺機能障害に悩んでいる方は少なくないと思います。 喫煙歴による肺機能低下、加齢による嚥下、肺機能の低下も避けられません。 嚥下機能、肺機能障害は日常の行動範囲や生活の質を低下させます。
単純喉頭摘出でなく、下咽頭を摘出し空腸再建をされた方に嚥下障害の悩みが深いと思います。しかし、あえて水分摂取の重要性について説明させていただきました。 様々な努力をしてもにわかに改善の実感が得られず、気持ちが落ち込んでしまう方も少なくないでしょう。 現状の維持を当面の目標となさってください。
そして多様な選択肢を排除せず、周りと比べず、あせらず、自分なりのペースで一歩一歩前へ進むことを諦めないでください。
それでも気分が落ち込んだ時は、同じ悩みを共有している、銀鈴会のお仲間やご家族の助けをかり、日常の営みを少しでも穏やかして、希望の光を見失わないようしてください。 皆様のご質問に対する私の提案が少しでもお力になれば幸いです。 健やかな日々を心からお祈りします。

ひろやまクリニック 久保田 彰



久保田顧問: 皆様が手術後に悩んでおられる問題点に対する私の考えは、それぞれのご質問に対する回答を通じてまとめました。全てのご質問の回答を読んでいただくと理解し易いと思います。よろしくお願いします。


質問:1 入会 H29 73歳  (下咽頭) 
     私たち気管孔で呼吸しているものが、PCR検査をする場合PCR検体は鼻と 気管孔の両方でしょうか? 現在食道発声ができていないのでELを使用しています。
顧問:唾液のPCR検査をお勧めします。


質問:2  入会 H30  72歳 (単純喉摘)
  @ 声は少し出るようになりました。しかし自分では何を言っているのかわかるのですが、他人にはわからないようです。
顧問:食道にためた空気ではなく、口の中や喉にためた少量の空気で発声する癖がついているのではないかと思います。
   A 連続して咽る様になり、気管孔あたりでヒーヒー言っています。
顧問:声を出す時に気管孔から吐く息が多くなり、声が聞きづらくなっていると思います。     いずれの問題も正しい食道発声を会得すれば解決すると思います。指導員の方から発声のコツを教えていただいてください。


質問:3 入会 H31 76歳 (下咽頭軟骨腫瘍)
       粘着の強い淡が夜中に気道に溜まり苦しくなって目が覚めます。     医師の指示で、カルボスティを夜2錠、朝1錠引用していますが、 改善されません。どのようにしたらよろしいでしょうか?
顧問: 粘着性の強い痰を防ぐには気管の保湿が重要となります。
その理由は下記の通りです。
気管、肺には異物を排出する線毛細胞があります。この細胞は保湿されると活性化し、痰を排出する能力が高まります。
また乾燥した痰は粘着性を増し気管に強く付着し排出を困難にします。付着した痰に細菌が増殖すると、気管、肺に炎症を起こし、咳込みをひどくします。
さらに頻繁な痰の吸引は気管の粘膜を傷つけ、血痰の原因となります。
気管の保湿は、室内の湿度の維持(50-60%)と、十分な水分摂取で維持されます。一日に1から1.5Lの水分摂取をお勧めしています。水分摂取には注意点があります。
日本茶、紅茶、珈琲などには利尿作用があります。摂取した以上に水分が失われる危険があるので、これらは水分量には加算しないでください。


質問:4 入会 R1 86歳 (上咽頭)  
      昨年11月脳梗塞で入院して、現在リハビリの為入院しいています。     車いすに乗ってしまったので、退院後は施設に入居予定です。     ただし気になることがあり、シャント術の事、プロボックスを知らないという施設が多く、お断りされたり大変でした。     施設入居後、自分ながらの注目点をご教示よろしくお願いします。
顧問: プロボックスは自己管理と専門医の管理が欠かせません。しかし介護施設に入居すると主治医に受診する機会も減るかもしれません。
自己管理の役割が増加しますが、脳梗塞の後遺症のために自己管理に援助が必要なことが案じられます。その場合に援助していただく方にプロボックスの知識がないと援助も難しいでしょう。プロボックスを紹介したインターネットのサイトをご紹介します。施設の医療者か、介護者の方に見ていただき、自己管理の手助けに役立てていただけけると幸いです。     喉頭摘出および喉摘後リハビリテーションについての集学的アプローチ GPRJ http://www.jshnc.umin.ne.jp/pdf/GPRJ_text.pdf

質問:5 入会 R1  85歳   (単純喉摘) シャント 
    喉(プロボックス)周りの掃除後、間を置かず、下を向く動作をすると忽ちプロボックスが塞がり呼吸困難になります。外出や、外食等恐怖感が伴います。     術後銀鈴会での時間がコロナで中止となり、練習が不足しています。
顧問: 呼吸困難になるのはプロボックスのためではなく、首の姿勢で気管孔が狭窄するためと推察します。気管孔の状態が首の姿勢に影響されないようにする方法を主治医にご相談ください。


質問:6 入会 R1  80歳    (下咽頭)
    痰と湿度室内の湿度の工程によって気管孔から出る痰の量に関係ありますか? 私は痰の量が多いのではないかと?
顧問: 鼻腔から吸った空気は加湿されますが、気管好からは乾燥した空気が直に入ります。乾燥した空気は気管、肺に慢性的な炎症を引き起こし、痰を増加させる危険性を孕んでいます。
そこで気管粘膜を乾かさないために十分な水分摂取とお部屋の加湿、ネブライザーをお勧めします
。時々気管孔のガーゼを覆わない方がいますが、ガーゼは肺に様々な炎症を引き起こす異物の侵入を防ぐだけではなく、気管の保湿のためにも重要です。     水分摂取をお茶、紅茶、珈琲で取られる方がいますが、これらには利尿作用があり、摂取した以上に水分が失われる可能性があります。
これらの飲水の禁止はしませんが、水分量に加算しないでください。また汗をかくか、食事摂取量が少なければ塩分を含むスポーツドリンクの摂取をお勧めしますが、汗をかかない場合は塩分を含まない真水の摂取をお勧めします。1日の摂取量として食事以外に1から1.5Lが目安になります。


質問:7 入会 R2 64歳  (小腸移植) 
    気管孔の穴が小さくなってきたので、カニュウーレを入れて小さくならないようにしていますが、そのカニュウーレの中に血が固まって中を塞いで息苦し大変です。一生チューブを付けていないといけないのかと思うと憂鬱ですが、何か対処法がありますか?チューブを入れるときキシロカインを塗布するのでそれも固まって穴についてしまうのでそれも困っています。 顧問: カニューレと気管の接触部位が傷つき出血し易くなり、乾燥した痰が気管に付着し気管の炎症を引き起こしていることが考えられます。
さらに痰を吸引するチューブを、気管の奥まで挿入するとカニューレ付近にとどまらず、気管を広範に傷つけ、出血を促し、咳を誘発して苦しくなります。
咳をすればカニューレの付近まで痰は排出されます。カニューレ下端に吸引チューブを挿入するだけで十分に痰は吸引できます。吸引チューブによる気管の刺激を少なくすれば、吸引時の咳や出血も少なくなります。 また外管と内管のある二重管のカニューレも選択肢になります。外管で気管孔を保持しながら内管を取り出し洗浄することで内管に付着した乾燥した痰を除去し閉塞の危険を防げます。
キシロカインゼリーはカニューレの先端を気管孔の皮膚からスムーズに挿入させるためなので、カニューレの先端に少量つければ十分です。カニューレ全体につける必要はありません。


質問:8 入会 R2 75歳  (下咽頭)
  手術後、坂の上り後、入浴後の上り、寝た後の立ち上がり時に眩暈が  よく出る様になりました。動かず静止していると眩暈は収まります。 また運動後、指静脈認証の機会が反応しないことが多くあります。 何か手術と関連がありますか?
顧問: 手術後に血のめぐりが悪くなっていると考えます。運動時には組織に十分な酸素を供給するために頻拍にして血流を増加する必要があります。
入浴時には血管が拡張するため血圧が下がり、血圧を維持するために運動時と同様に循環血液量を増加させる必要があります。立位になると重力のために脳に十分な血流が行かなくなり、脳血流を確保するために血圧を上げる必要があります。いずれの場合も心臓に負担をかけます。手術後の水分摂取量が少ないと循環血液量が少なくなり心臓が適切に対応できず、血のめぐりが悪い状態となります。十分な水分摂取に心がけてください。 また手術後に放射線治療をされていると頸動脈に狭窄をきたし、脳血液量が低下する場合があります。定期的な頸部超音波検査、CT検査で診断できます。


質問:9 入会 R2 61歳   (単純喉摘)  
    今はコロナで自宅練習中ですが食道発声のコツが中々つかめません。     EL使用しています。
顧問: 自宅練習でコツがつかめず苦労されているようですが、コミュニケーションを維持することは大切です。コロナ感染が落ち着くまでELで会話することを躊躇しないでください


質問:10 入会 R2 78歳  (単純喉摘)  
   @手術当初より少なくなりましたが、痰が出るので遠出が難しいです。     コロナ禍の今は特に難しい。教師での皆さんはそんなに困っているようにはが見えない。時の経過によって痰が少なくなりますか? 今は生理食塩液で吸入しています。
顧問: 気管の保湿に注意されていれば、個人差はありますが徐々に減少し てくると思います。    A以前他の会で噴霧器状の6〜7pの(長さ)吸入器を見ましたが購入出来ますか?
顧問: 購入できます。手術を受けられた医療者に訪ねてください。


質問:11 入会 H13 75歳 (単純喉頭) 
   @量販店(スーパーマーケット)などの入り口でスプレータイプの消毒液器具が設置されていますが、このスプレー液は気管孔から少量を吸い込んでも平気なのでしょうか?
顧問: 特に問題ないと考えます。    A気管孔の呼吸部分は布製(綿製)プロテクターでコロナウイルス対策には少々不安ですが大丈夫でしょうか?不織布などでさらにカバーできる方法はありますか?
顧問: マスクは他人に飛沫からの感染させないことにあります。三密を避けて飛沫をあびる環境を回避すれば、プロテクターの素材を気になさることはないと思います。


質問:12 入会 H30 80歳(下咽頭) 
     食事中、多く口に入れて飲込みすると喉に閊えることが多くなっている。よく咀嚼して食べるけども?注意不足でしょうか?
顧問:  空腸で下咽頭を再建された場合は、空腸の逆蠕動で嚥下障害が出現する場合があります。徐々に改善されると思います。十分に咀嚼すること、食事に時間をかけることに引き続き留意されてください。


質問:13 入会 H29  77歳 (単純喉摘)
     @5年以内での再発の可能性はどの程度でしょうか?
顧問:  病期(癌の進行度)により再発の確率は異なります。過去の報告は人の治療成績です。同じ病期であっても個々で再発の可能性は異なります。
再発の可能性を案じる気持ちは理解できますが、わからないことに悩むより、確実に存在する今日の一日を健やかに生きることに、気持ちを集中されてください。
     A運悪く再発する場所はどの部位になりますか?
顧問:  頸部リンパ節の再発、遠隔転移は肺の再発が多いです。
     B再発しない様には、防止策はありますか?
       顧問:  手術後の再発を予防する標準治療剤はありません。
しかしS-1の内服はUFTより生存率が向上したとの臨床試験があり ます。副作用が少なければ選択肢の一つになると考えています。主治医とご相談ください。 頭頸部に限らず、他の部位でも飲酒と喫煙は最も重要な発癌因子となります。したがって飲酒を止めることは有効な再発防止策となります。  


質問:14  入会H29 68歳(小腸移植) 
     食事が上手くできません。食べたものが時には逆流して、吐いてしまうことがあります。      咽頭に栓をした感じになり、水も通らない事も屡々です。
顧問:  再建小腸の逆蠕動の問題と食道との吻合部狭窄の可能性があります。吻合部狭窄の可能性を主治医にご相談ください。
逆蠕動は改善してくる可能性がありますが、吻合部狭窄は拡大術が必要です。狭窄部に食塊が詰まると水分も通らなくなります。狭窄の有無を確認するまでは経口栄養剤などの流動食や、食塊が狭窄部に詰まっても自然に溶ける食材の摂取をお勧めします。


質問:15  入会 H31 74歳(皮膚移植)
      入会して2年過ぎましたが、未だにはっきりした原音が連続しません。誤発声は少し出ていますが、(口腔囁語?咽頭発声?)
顧問:   皮膚移植で吻合部が狭窄して、空気が十分に飲めない可能性があります。狭窄の有無を主治医に確認し、食道発声が困難な場合は電気喉頭、プロボックスなども考慮されたらと思います。


質問:16 入会 H29 82歳( (単純喉摘)
      冬季になると喉には湿度が重要とよく言われますが、何%程度が最適になるのでしょうか?
顧問:   最低50%から60%を保持するようにお勧めしています。


   

質問:17 入会 R2. 73歳  (空腸移植)
      @喉摘者としてコロナ肺炎の対策をお願いします。
      顧問:   コロナ肺炎は加齢、肥満、糖尿病、心臓疾患が重症化の危険因子とされています。室内でマスクを外して会話している場所には気をつけてください。
他人との距離は1m以上(できれば2m以上)を保持することが大切です。眼からの感染を防ぐために眼鏡の装用も有効とされています。 コロナ肺炎はコロナウイルスが引き起こす免疫の過剰反応と考えられています。そのためにコロナ肺炎には免疫抑制剤が有効とされていますが、残念ながら特効薬はありません。 一方でワクチンは副反応の問題を凌駕する高い重症化予防効果が報告されています。ワクチン接種の順番がきて、接種の除外基準となる問題がなければ速やかに接種されることをお勧めします。
またワクチンの感染を予防する効果は明らかになっていません。ワクチンを接種されても感染予防は継続されてください。
      A術後1年以内頃から、鼻水が頻繁に出る感じです。耳鼻科で        処方薬をもらい少なくなっていますが、鼻腔は空気の通り道        でないのに鼻炎になるのはなぜでしょうか?
顧問:   食事、温度変化、吸入した物質も鼻水の原因となります。加齢も鼻水を増加します。抗アレルギー薬の点鼻、内服が有効な場合があります。


質問:18 入会 R1 69歳  (単純喉摘) 
        ウイルスは鼻の奥や、咽喉に侵入しますが、発声するとき以外はほぼ口や、鼻から呼吸をしていないので風邪に罹らないと思いますが?
顧問:   ウイルスの飛沫感染の経路は経鼻以外にも、手指を介した経口からの感染、また気管孔からの感染が考えられます。       皆がマスクをして飛沫感染を防止し、三蜜を防ぐことが重要となります。       意外かもしれませんが排便中にもウイルスが存在します。トイレを利用した後は手を消毒して清潔に保つことが大切です。外出の際の食事には箸かフォークを使用し、手で食べることは避けてください。


質問:19 入会R.1 74歳   (下咽頭)
     入浴時や洗顔時に気管孔に水が浸入した場合、自力で水を出す事 は出来るのでしょうか?
顧問:   少量の水なら咳反射で水を排出することも可能ですが、十分に気を付けてください。       入浴時にご家族の介護がなくても大丈夫、お一人で入浴できるとの過信は禁物です、そのような時こそ注意事項を再確認してください。
また飲酒後の入浴はお勧めしません。入浴して気持ちよくなって眠ってしまうことに注意が必要です。


質問:20 入会 H.30 70歳(空腸移植)
     @食道、下咽頭、舌がんと3回手術後、食事、流動物の嚥下が上手くいきません。良策ありますか?
顧問:   あきらめずに少しずつ嚥下することを心がけてください。栄養が十分に入らず栄養状態が低下すると体力と気力が低下し、嚥下機能がさらに低下する危険があります。
その場合には胃瘻も選択肢になります。胃瘻には抵抗がある方も少なくないと思います。この場合の胃瘻は経口摂取をあきらめるのではなく、嚥下機能を回復するための、一時的な処置との発想が必要です。また好きなものを少しずつでも味わうことは楽しみの一つなります。万が一食塊が吻合部に詰まっても、胃瘻から栄養や水分を注入できるので緊急受診する必要もありません。 嚥下のリハビリテーションで嚥下機能が改善される方もいます。手術を受けた施設でご相談ください。
     A食事はやっとこ飲込めたとしても空腸に溜まり、食事後2時間程度で逆流現象がありますが、やはり時間が必要なのでしょうか?
顧問:   時の経過とともに徐々に空腸の逆蠕動が解消し、嚥下機能が改善する可能性はあります。


   

              以上です
 上記については9月発行予定の48号会報にも掲載いたします。                神奈川銀鈴会 会長  森  政之
                 家族会  会長  川崎 定宥


          


トップページ